東洋医学において重要な位置にあるのが太極陰陽論です。天地陰陽とは、固定的なものではなく、形無きもので、千変万化するものであるとされています。この陰陽を調節するのが鍼であり、鍼の本質は陰陽をととのえることにあります。
太極陰陽論を生み出した背景
古人は自然観察からこの世の成り立ちや法則性を悟ってきました。そこから人と天地は全く無関係でなく、相関し相互に影響し合っていると考えるようになりました。天と人は独立したものではなく一体であるという考え、これを「天人合一思想」といい、その法則を医療に応用してきました。
この世界、万物、森羅万象は「気」から出来ている、これを「気一元」といいます。
気とは、天地をみたす大元、形をなす大元、人の生の根源的なもの、心の大元だとされています。気とは形に先立つものでありなんらかの「機能」を果たすものといえます。
太極陰陽論とは
森羅万象の運動変化の法則の大元として「陰陽」という考え方があります。より動的な作用、性質のことを「陽」といい、より静的な運動全般や性質を「陰」といいます。
気と陰陽は裏表の関係にあります。気を論理の世界で把握することが陰陽の概念になります。臨床においては脈診や舌診により八綱陰陽を診ます。
太極とは陰陽の大元となるものであり、同時に陰陽に分けられる場そのものであります。陰陽は必ず太極を踏まえて物をとらえます。つまり太極陰陽とは、何事も陰陽に分析した後に、必ず太極に戻って考えるという考え方です。
太極陰陽論の16の法則
陰陽論を具体的に活用するために藤本蓮風先生は『東洋医学の宇宙』(緑書房)に16の法則を挙げています。
1.対立の統一の法則 2.連続性と不連続性の法則 3.常と変の法則 4.境界の法則
5.消長の法則 6.平衡の法則 7.互根の法則 8.循環の法則 9.転化の法則
10.異極は相求め、同極は相反発する法則 11.標本緩急の法則 12.陰中の陽、陽中の陰の法則
13.陽は昇り、陰は降るの法則 14.Zの法則 15.陽は発散、陰は凝縮の法則
16.陽は陽へ、陰は陰へ集まる法則
自然と調和すること
私たち人間は陰陽から成り立っています。陰と陽は一方が過剰になっても、また不足してもいけません。私たちと自然は相互に影響し合っており、独立して存在することはできません。陰陽をわきまえることでより自然と調和する生き方につながります。